発達障害の職場定着支援
―ニューロダイバシティで「障害」のイメージを覆そう！

　自閉症スペクトラム（ASD）と注意欠如多動性障害（ADHD）とされる方々は職場で文脈の共有や共同作業がスムーズでないことが多いとされます。一緒に働いている方々を困惑させ、職場定着が困難になる実態もあるようです。ただ、心理科学・神経科学的には、独特な神経発達に因って本人の意志とは無関係な心の使い方の個性が出ているだけです。実は、周囲が自分たちと同じ心の使い方を期待するので、協働における困難が生まれているだけなのです。つまり、「障害」は当事者とされる方の中にあるのではなく、当事者と周囲の間にあるのです。
　心の使い方が違うということは、得意なことが違うということです。この観点で相互に得意なことを尊重し合うことで、より機能的な組織を作れるのではないでしょうか？当日はこのニューロダイバシティの発想で、経営者、キャリア支援者、心理学研究者、精神科医・産業医などのマルチな観点で、発達障害の職場定着の実際を議論し、さらに組織の強化まで展望できることを目指します。

新名 佐代 （しんめい・さよ）
一般社団法人 職場のメンタルヘルス支援委員会 代表理事
国家資格キャリアコンサルタント
2001年よりIT企業にてコンサルタントとして企業のデジタルマーケティング支援に携わる。その後プレイングマネージャーとして複数の部署のマネジメントを経験する中、ほぼ同時に3名のメンタル不調者を出してしまう。それをきっかけにメンタルヘルスマネジメントやカウンセリングに興味を持ち、EAPメンタルヘルスカウンセラーの資格を取得。2018年からは人事として、人事制度改定、採用、人材開発などを担当。2020年に独立し、一般社団法人職場のメンタルヘルス支援委員会を設立。Well-beingの普及により、働きやすい職場環境の構築、働く人のメンタルヘルス向上のための事業を通じ、ワーク・エンゲイジメント向上、生産性の向上、人材の定着など企業が抱える課題を解決することを目指し法人の活動をスタートさせる。

須賀 えり子（すが・えりこ）
株式会社ループス・ネット（ＩＴ事業所）取締役、株式会社Ａｉ・フィールド（企業領域キャリアコンサルティング事業所）代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
2001年4月 夫のＩＴサービス事業を共に法人化。直ぐに人材育成に課題を感じるが、原因と対処方法が明確にならず翻弄。その後、義父の脳梗塞発症がきっかけで心理学に出逢う。義父の介護とリハビリの過程で、人は年齢や状況に関わらず成長し変化できることを目のあたりにし魂が揺さぶられる経験をする。ここに人材育成の光明を見出し、キャリアコンサルタント資格取得。更に、ゲシュタルト療法などの心理療法やEAPメンタルヘルスの学びを通して、人の成長と発達の大きな可能性に着目していく。現在は企業領域でのセルフ・キャリアドック、EAPメンタルヘルスカウンセリング、対話を通した組織開発へと活動の幅を拡げている。

小川 耕平（おがわ・こうへい）
目黒駅前メンタルクリニック 院長、青山学院大学 非常勤講師、医学博士、精神科医、産業医、国家資格キャリアコンサルタント
福島県立医科大学卒業、日本医科大学大学院修了。臨床精神薬理学・司法精神医学・産業精神保健学を修める。長谷川病院、成増厚生病院、日本医科大学付属病院などの精神科に勤務し、平成30年から目黒駅前メンタルクリニック院長。日本では貴重なキャリアコンサルタント資格を有する精神科医。
精神疾患だけでなく「キャリアの病」にも対応し、多くの患者に生きる力と勇気を与えている。
この他、産業医として多くの大手企業で活躍し、司法の場では精神鑑定医としても積極的な活動を続けている。

杉山 崇（すぎやま・たかし）
神奈川大学人間科学部 教授、神奈川大学心理相談センター 所長
臨床心理士・公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士
1994年より発達障害児の心理支援、精神科、学校/教育委員会、EAP事業所などで心理職を務め、並行して日本学術振興会特別研究員など心理学研究者として活動する。90年代は脳の病、認知の病とされていたうつ病（depression）の社会要因（対人関係や立場、キャリアなど）の病としての側面を心理科学的に実証。成果を支援活動に活かすべく、2000年代からキャリア支援へと活動の幅を広げる。発達障害をワーキングメモリ実行機能と衝動性の特性と再定義し、心理支援・キャリア支援の文脈では自閉症スペクトラム傾向を「認知スタイル」、ADHD傾向を「行動スタイル」と捉えることを提案し、アセスメントツールと支援メソッドの開発に注力している。