WORKSHOP

研修会

[W1]関係モデルによる統合的なカウンセリング

心理支援への統合的なアプローチについて、みなさんと一緒に学んでいきたいと思います。心理支援には、心理力動的、ヒューマニスティック―体験的、認知行動的、システミック、ナラティブ、実存的、などなど、多様なアプローチがあります。統合的なアプローチは、単一の学派に依拠せず、多様な学派をリソースとして活用するアプローチの総称です。私はその中でも関係モデルによる統合的アプローチを特に追究しています。技法モデルでは、技法そのものが治療効果をもつと考えられていますが、これとは対照的に、関係モデルでは、どのような技法も、良質のカウンセラー―クライエント関係の中で効果を発揮するということが前提とされています。関係モデルによる統合的アプローチの視点から、キャリア・カウンセリングの実践にとって重要と思われる考え方や関わり方をお伝えしたいと思います。

講師

杉原 保史 (すぎはら・やすし)
京都大学学生総合支援機構学生相談部門 部門長(教授)
1961 年神戸市生まれ。教育学博士。公認心理師。臨床心理士。日本心理療法統合学会副理事長。京都大学の学部・大学院で臨床心理学を学ぶ。大谷大学文学部専任講師、京都大学保健管理センター講師等を経て、現職。30 代の終わり頃にポール・ワクテルの心理療法統合の考え方に出会い、ワクテルの主要著作4冊を翻訳。その後、やはり心理療法統合の流れに属するジェローム・フランクの古典的名著『説得と治療』を翻訳。
関係モデルによる統合的な心理カウンセリングを学び、日々、実践している。


[W2]セルフ・キャリアドックにおけるカウンセリング

セルフ・キャリアドック(以下、SCD)の最終的な姿は、仕事を通じて個人が働きがいを獲得し、同時に組織は業績を向上していくこと、すなわち、個人と組織のWin―Win関係を実現することです。ところが、日本型雇用では、必ずしも個人が希望する職務に就けるとは限りません。そこで、個人が深層に持つ根源的なWillを自覚してもらい、これに基づいて組織・職場からの要請(Must)との擦り合わせを実現する支援が求められます。本研修では、SCDの在り方を概観した後に、WillとMustとのすり合わせを実現する面談手法について解説をいたします。具体的には、認知心理学の視点とナラティブ・アプローチを融合してクライエントの根源的Willを深掘りする技法と、WillとMustを統合するジョブ・クラフティングの要点について解説します。SCDに限らず、企業内カウンセリングを推進する支援者の方は是非ご参加ください。

講師

高橋 浩(たかはし・ひろし)
ユースキャリア研究所 代表
博士(心理学)。キャリアコンサルタント。公認心理師。
法政大学キャリアデザイン学部/明治学院大学心理学部/目白大学大学院心理学研究科 非常勤講師。
日本キャリア開発協会 理事。本学会理事 研究委員長。 1965 年青森県生まれ。弘前大学教育学部卒業後、NEC グループの半導体設計会社に勤務。設計エンジニア、品質管理、経営企画、キャリアアドバイザーに従事。2011 年退職。並行して、自身のキャリアに疑問を持ち、1996年からカウンセリングを学び始め、2001 年CDA、2012 年博士号を取得、同年、研究所を開設。現在、個人が仕事で幸せになるための実践と研究を行っている。著書『セルフ・キャリアドック入門』、『社会人のための産業・組織心理学』、他多数。


[W3]弁護士から見た支援の可能性‐キャリアとメンタルヘルスの法律講座

当講座は、キャリア支援・メンタルヘルス支援の実務を行う中で、弁護士等法律の専門家にリファーすることで更に充実した支援を行える事案を把握し、適切にリファーできるための基礎的な法律的知識を学ぶ研修であり、前半を牛見が、後半を山田が担当する。短時間で効率的に学ぶため、離婚、労働、債務整理などを例に挙げ、面談でどのような場合に法律家へのリファーを考えるべきか等、実践を意識した内容とする予定である。なお、牛見は一般社団法人弁護士EAP協会の理事長であり、山田は一般社団法人日本キャリア法務協会の理事長である。当講座においては、より良いキャリア支援・メンタルヘルス支援を行うための両協会の活用方法にも触れる予定である。

講師

牛見 和博(うしみ・かずひろ)
弁護士法人牛見総合法律事務所
1981 年山口県生まれ(40 歳)。2013 年に故郷である山口市で開業。これまでに法人・個人あわせて5000 件以上の相談が寄せられ、弁護士5 名、臨床心理士1 名、スタッフ8名、県下有数の規模に成長。顧問先は100 社を超える。2021 年には全国の弁護士とともに一般社団法人弁護士EAP協会を設立し、理事長に就任。「日本中の人が弁護士にアクセスできて相談できるようにする」というビジョンを掲げ、EAP(従業員支援プログラム)を全国に普及すべく活動している。

山田 英樹(やまだ・ひでき)
弁護士、国家資格キャリアコンサルタント(登録番号:20011604)
一般社団法人日本キャリア法務協会 理事長
早稲田大学人間科学部卒業(生体機能学研究室・今泉ゼミ)、神戸大学大学院経済学研究科博士課程前期課程社会人コース中退、CC 養成講座(LEC)修了。民間企業勤務等を経て、司法試験予備試験、司法試験合格。最高裁判所司法修習生修了。勤務弁護士を経て、「上町総合法律事務所」設立。 「目の前の人を支援する」ため、法律的な支援とキャリア支援の架橋に関する活動を行う。神戸大学法科大学院リーガルフェロー、日本プロ野球選手会公認代理人。法と教育学会、民事信託士協会、中小企業家同友会会員。


[W4]システム論で捉える個と組織: 組織開発の視点から

この研修会では、システム論を切り口に、組織と個の関係を考える視点をご紹介したいと思います。システム論で捉えるとは、人が様々なシステム (要素同士が相互作用し続ける全体) の中にいて,人の行動や考え方がシステムの関係や状況によって変化すると考えることです。たとえば,ある人が「問題」とされている場合にも,その人自身が「問題」なのではなく,関わりの枠組みや,関係の中で起こってくるコミュニケーションのパターンによって,「問題」と見なされると考えたりします。研修会では、家族療法で用いられるシステムズアプローチの発想のほか,システム論の考え方,3者関係について説明する社会心理学の理論 (バランス理論など) を挙げながら,個と組織の関係を捉える枠組みを紹介します。これらを通して、個と組織の有機的なつながりを意識しつつ、そこに働きかけていく組織開発の可能性について、一緒に考えられる場にできたらと考えています。

講師

土屋 耕治 (つちや・こうじ)
南山大学人文学部心理人間学科准教授
南山大学人間関係研究センター員を兼任。1982 年、神奈川県横浜市生まれ。2011 年3月名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程単位取得退学。南山大学講師を経て、2021 年4 月より現職。専門領域は、社会心理学、組織開発、体験学習。米国NTL Institute OD Certificate Program 修了。社会心理学の実証的研究に加え、T グループのトレーナー、組織開発のコンサルティングも行うほか、OD Network Japan の基礎講座の講師も担当している。組織開発では、事例の心理学的理解、倫理、思想史、熟達化を専門としている。


[W5]もう一度カウンセリング入門

本研修会では、カウンセリングを学ぶ過程の中で出会う基本的な姿勢や主訴、傾聴について、もう一度検討していきました。このような基本的なことは、十分に語られることなく概要的な説明に留まってしまいがちです。ところが、このようなところこそが、カウンセリングに留まらず、さまざまな相談業務を支えてくれるものであり、そのセッションの満足度に大きな影響を及ぼすものです。そして、基本的な方針さえ知っていれば誰もができるようになるものではなく、実践経験を通じ、さまざまな検討を通じて、研鑽を積み上げ続けていくべきものであると考えています。本研修会が、そのような継続的な取り組みにおいて、何らかの助けになることを願っているところです。

講師

国重 浩一(くにしげ・こういち)
NPACC NZ Limited ディレクター ナラティヴ実践協働研究センター所属
ダイバーシティ・カウンセリング・ニュージーランド所属
ニュージーランド、ワイカト大学カウンセリング大学院修了。日本臨床心理士、ニュージーランド、カウンセラー協会員。1964 年、東京都墨田区生まれ。ニュージーランド、ワイカト大学カウンセリング大学院修了。日本臨床心理士、ニュージーランド、カウンセラー協会員。鹿児島県スクールカウンセラー、東日本大震災時の宮城県緊急派遣カウンセラーなどを経て、2013 年からニュージーランドに在住。同年に移民や難民に対する心理援助を提供するための現地NPO 法人ダイバーシティ・カウンセリング・ニュージーランドを立ち上げる。2019 年には東京に一般社団法人ナラテイヴ実践協働研究センターの立ち上げに参加。2019 年から日本産業カウンセリング学会の理事、2021 年から日本キャリア・カウンセリング学会の理事となり、国際交流委員会に所属。


[W6]職場のメンタルヘルス

筑波大学に赴任してから、キャリアコンサルタントなどキャリア支援に関わる方々との接点が増えました。私自身は臨床心理士として職場のメンタルヘルスに長く関わっておりますが、キャリアに関する相談も受ける機会が多くあります。私はキャリアの専門家ではありませんが、私が担当させていただいた事例を参考に、私がどのようなカウンセリングを現場でさせていただいているかの一端をご紹介することができればと思っています。キャリアがご専門の皆様も、ぜひこの研修会をお聞きいただき、メンタルヘルス不調者のキャリア支援や組織支援にさらに積極的に関わっていただければ幸いです。

講師

大塚 泰正(おおつか・やすまさ)
筑波大学人間系心理学域教授
博士(文学)(早稲田大学)。専門は臨床心理学、産業保健心理学。
著書に『健康・医療心理学入門』(有斐閣、2020)、『よりよい仕事のための心理学』(北大路書房、2019)、『Q & A で学ぶワーク・エンゲイジメント』(金剛出版、2018)、『公認心理師のための説明実践の心理学』(ナカニシヤ出版、2018)、『産業保健心理学』(ナカニシヤ出版、2017)など。